KPI(重要業績評価指標)とは?設定のステップやコツ、管理方法を解説

KPIは、企業の目標達成度を評価するための指標です。最終的に目指すべきKGIをもとに決定されるため、企業の目標のなかでも重要な位置づけとなっています。また、KPIはモチベーションの向上や人事評価制度の確立にも役立ちます。適切なKPIの設定のコツも紹介しているため、是非参考にしてみてください。

KPI(Key Performance Indicator)とは

KPIとは、企業の目標達成度を評価するための指標です。「重要業績評価指標」とも呼ばれており、売上に対して「コンバージョン数」と「顧客単価」のように、最終的な目標を達成するうえで必須となる要素がKPIにあたります。
KPIは週次や月次、四半期などの一定期間における目標として設定されるのが一般的です。

KGI(Key Goals Indicator)との違い

KGIとは、KPIの先にある最終目標を評価するための指標です。「重要目標達成指標」とも呼ばれており、売上や利益のように、企業運営においてもっとも重要な目標がKGIにあたります。

なお、部署や担当者ベースでKGIが設定される場合は、企業が目指す売上や利益を目指すうえでみずからが達成すべき最終目標が設定されるため、かならずしも売上や利益がKGIとなるわけではありません。たとえば人事部で新卒採用を担当する担当者の場合、新卒入社する人数がKGIに設定されるケースもあるでしょう。

OKR(Objects and Key Results)との違い

OKRとは、「達成目標(Objects)」と「主要な成果(Key Results)」を設定する目標管理手法です。KGIとKPIの関係性によく似ていますが、KGIやKPIよりもシンプルに短期間の目標を設定する際に用いられる傾向があります。

KSF(Key Success Factor)との違い

KSFとは、事業を成功させるために必要となる要因です。KGIやKPI、OKRは自身の努力によって達成できる項目を設定しますが、KSFには市場動向や競合他社などの外的要因も含まれます。そのため、目標設定だけではなく、戦略立案を目的として用いられる傾向があります。

KPIを設定するメリット

近年では、国内でもKPIによって目標を管理する企業が増えていますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下では、KPIを設定するメリットについて解説します。

個人目標を明確化できる

KPIを設定すると、個々の社員の目標を明確化できます。KPIでは定量的な目標値が設定されるため、目標を達成するためのアクションも明確になります。具体的な目標をもたないまま、日々の業務に取り組むよりも成果につなげやすくなるはずです。

評価基準を統一できる

KPIは人事上の評価基準にも活用できます。社員に対して個人目標を示しやすくなるだけでなく、評価基準の明確化にも役立ちます。たとえば、個人の売上目標が年間1,000万円の場合、さらに細かく数段階の達成度合いを決めておき、事前に評価基準をすりあわせておくことも可能です。

組織全体のモチベーションが上がる

KPIの先には企業全体が目指すべきKGIが存在します。組織が大きくなると、個々の社員が企業全体に対して貢献している実感はわきにくくなりますが、全員がKPIを共有していれば一丸となって目標に向かえます。その結果、組織全体のモチベーションの底上げにもつながるでしょう。

KPIの設定方法

KPIはマーケティングにおけるフレームワークの一種です。そのため、業種や職種によって設定方法が変わることはなく、基本的な流れは同様です。
以下では、KPIを設定する流れについて解説します。

KGIを設定する

前述のとおり、KPIはKGIを細分化した指標です。そのため、まずはKGIが明確になっていないと、どんな指標をKPIに設定すればいいかがわからなくなってしまいます。
なお、KGIを設定する際には、企業が目指すべき最終目標を決めるのがポイントです。また、KGI・KPIは定量的に目標値を定めて、達成度を振り返れるようにしておくのも重要です。

KGIを細分化する

次に、KGIを細分化してKPIに設定すべき指標を洗い出します。KGIを細分化する際は、KGIまでのプロセスにのっとって考えていくのがおすすめです。たとえばECサイトで商品を販売する場合、ECサイト内にユーザーが流入して商品を選んで購入ページへ進み、購入ボタンを押すと売上が発生します。
つまり、KGIのプロセスをもとに考えると、以下のような項目をKPIに設定すべきだとわかります。

  • ECサイトを訪問したユーザー数
  • 商品をカゴに入れたユーザー数
  • 購入ページに進んだユーザー数
  • 購入を完了したユーザー数
  • ユーザー一人あたりの顧客単価

KSFからKPIを設定する

KGIの細分化とあわせてKSFを洗い出しておくと、KPIの設定もれを防止できます。KSFはKGIを達成するうえで必要な要素です。KGIを細分化してKPIを設定するときとは異なり、KSFでは定性的な要素を中心に洗い出します。
先ほどのECサイトの例をあげると、ユーザーを獲得するためのSNS運用やSEO施策などがKSFにあたります。つまり、KGIを細分化して設定した「ECサイトを訪問したユーザー数」に対して「SNS経由の訪問ユーザー数」や「検索エンジン経由の訪問ユーザー数」を加えるべきです。

KPIツリーを作成する

KGIの細分化、KSFの洗い出しによってKPIを設定できたら、KPIの一つひとつの指標をツリー状にまとめます。ECサイトの例では、KGIとなる「売上」から「購入を完了したユーザー数」と「ユーザー一人あたりの顧客単価」、「購入を完了したユーザー数」から「購入ページに進んだユーザー数」と「購入ページを訪れたユーザーの購入完了率」といったようにツリーを作成します。

KPIツリーを作成する目的は、週次や月次などのタームを終えて実績値を入力したときに、目標の達成・未達成の要因をわかりやすくするためです。また、KPIとKGIの関係性を視覚的に整理できる点もKPIツリーを作成するメリットです。

KPI設定に欠かせないSMART

KPIを設定する際に意識すべきポイントとして「SMART」があげられます。SMARTはKPI設定において欠かせないポイントをまとめたものです。
以下では、SMARTの項目について解説します。

Specific

Specificは目標の明確性です。前述のとおり、KPIは全社員の間で共有してこそ、大きな力を発揮するため、誰が見てもわかるように設定する必要があります。

Measurable

Measurableは目標の測定可能性です。たとえば定性的な目標を設定してしまうと、人によって測定の基準が異なり、目標に対する実績の評価にばらつきが生じます。KPIを設定する目的は公平な基準にもとづき、個人の実績を評価することでもあるため、測定可能な形で設定しなければいけません。

Achievable

Achievableは目標の達成可能性です。達成できない目標は社員のモチベーションを下げてしまうおそれがあります。一方、あまりにも達成が容易な目標をたてるのも適切ではありません。
そのため、KPIを設定する際には、達成可能性の面からバランスをみておくことが大切です。

Related

Relatedは目標の関連性です。目標設定の前提として、KPIはKGIに至るまでのプロセスでなければいけません。つまり、KGIとの関連性が薄い目標はKPIとして設定すべきではないといえます。
KPIには個人目標としての側面もありますが、企業全体のKGIにつながる個人目標をたてる必要があります。

Time-bounded

Time-boundedは目標の適時性です。KPIを設定する際には、あわせて一定の期限を設けておき、定期的に振り返ることが重要です。適切な目標をたてていても、目標に対する達成度、達成・未達成の要因を振り返る時間がなければ意味がありません。

KPIの設定例

前述のとおり、KPIを設定する際はKGIを細分化していき、個々の指標を決定します。
以下では、ECサイトとWebマーケティングの2パターンにおいて、KPIを設定する例について紹介します。

ECサイトにおけるKPIの場合

ECサイトの場合、KGIを年商や月商などの売上とするのが一般的です。売上をKGIとすると、売上件数と顧客単価がKGIを構成するKPIとなります。つまり、現状から1.5倍の数値をKGIに設定したときは、売上件数と顧客単価のどちらかを1.5倍にすれば達成できます。
たとえば売上件数を1.5倍にするのが現実的でなければ、売上件数は1.2倍、顧客単価を1.25倍にしても1.5倍の売上を達成可能です。

WebマーケティングにおけるKPIの場合

Webマーケティングの場合、KPIをコンバージョン数とするのが一般的です。コンバージョン数をKGIとすると、ユニークユーザー数とコンバージョン率がKGIを構成するKPIとなります。
さらにKPIを細分化すると、ユニークユーザー数のうち、コンバージョンページを訪れたユーザー数や流入チャネル別のユーザー数なども、KPIになる可能性があります。

KPIマネジメントのポイント

KPIは設定して終わりではなく、目標として管理しつつ、定期的に振り返ることが大切です。たとえ適切にKPIを設定できていても、しっかりマネジメントできなければKPIをたてた意味がありません。
以下では、KPIマネジメントにおけるポイントについて解説します。

KPIと指標の整合性を確認する

KPIはKGIにもとづいた指標でなければいけません。たとえばKPIに設定している指標が変化したにもかかわらず、KGIに設定している指標が変化していなければKPIを見直す必要があります。

評価制度を整備する

KPIは定量的に評価できる指標で設定しますが、単純にパーセンテージで達成度を計るだけでは不十分です。個々のKPIによって達成の難易度は異なるため、達成度のみを基準にして一概に評価するのは適切ではありません。
そこで個々のKPIの難易度を勘案したうえで、どれくらいの達成度でどのような評価を下すのかを明確にしておくのがおすすめです。

定期的に振り返りの機会をつくる

KPIは定期的に振り返り、次期のKPIを見直すことで効果を発揮します。顧客のニーズや市場の動向はたえず変化しているため、毎年同じようにKPIを設定していると現実的でない数値が目標になってしまうおそれもあります。
また、KPIを振り返るタイミングで成功・失敗の要因を棚卸しして、次期の方針を策定することも重要です。

エクセルやスプレッドシートなどの管理ツールを活用する

KPIを管理する際は、エクセルやスプレッドシートなどの表計算ツールを利用すると便利です。いずれも関数を活用した計算、表やグラフなどの図式化がスムーズに行えるため、数値の分析だけでなくレポーティングにも役立ちます。

トヨタ式のKPIって?

トヨタ式のKPIとは「カイゼン」を要因として目標を達成しようとする考え方です。各業務におけるムダをなくし、効率的に業務を進められる環境を整えることによって、KPIの達成を目指します。ただ目標をたてて達成を目指すだけでなく、目標を達成するためのアプローチも決まっている点が特徴的です。

プロセスKPIって何?

プロセスKPIとは、ゴールであるKGIに対してプロセスとなるKPIのことです。一般的なKPIもKGIまでのプロセスをもとに決定されるため、KPIとプロセスKPIの間に大きな意味の違いはありません。

まとめ

まとめ

KPIは、企業活動における目標の一つです。最終的に目指すべきKGIをもとに決定されるため、企業の目標のなかでも重要な位置づけとなっています。
なお、KPIは目標を明確化するだけでなく、モチベーションの向上や人事評価制度の確立にも役立ちます。適切なKPIを設定できれば、より効率的な企業活動を実現できるでしょう。

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