LTV(ライフタイムバリュー)の意味・計算方法と向上させるコツを解説

「広告費を投資しているけど収益が安定しない・・・」
「むだなコストを洗い出して収益をアップさせたい・・・」

このようなお悩みをお持ちであれば、LTVの指標が役に立ちます。LTVは顧客生産価値をあらわす指標であり、自社のLTVを把握することで収益の最大化を目指せます。今回はマーケティング初心者の方にもわかりやすくLTVの意味を解説します。あわせてLTVの計算方法や、改善のコツを紹介します。最後までご一読ください。

LTV(ライフタイムバリュー)とは?

LTVは「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の略語です。日本語で「顧客生産価値」の意味であり、ひとり(法人であれば1社)の顧客から、生涯にわたり得られる利益をあらわす指標です。

美容院を例に挙げてみましょう。お客様は定期的に美容院へ通いますが、生涯にわたりずっと通ってくれれば総売上(LTV)は高くなります。しかし、美容業界はライバル店も多く、顧客の奪い合いは日常的です。お客様を奪われてリピートしてくれないと、お客様の生涯で得られる総売上(LTV)は低くなります。

LTVは、美容院のような「継続的に利用される商品・サービス」に対して用いられる指標です。たとえばマイホームや結婚指輪など、生涯で何度も購買しない商品やサービスには用いられません。

LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法

LTVの計算方法は、ビジネスモデルによって異なります。最もシンプルなのは、次の計算式です。

LTV=「購入単価」×「収益率」×「購入頻度」×「継続期間」

たとえば、【購入単価(5,000円)×収益率(50%)×購入頻度(年5回)×継続期間(5年)】の場合、LTVは62,500円です。収益率は原価に対する収益の割合で計算しますが、返品や割引などを差し引いた純収益で計算してもOKです。

LTVを計算するコツは、はじめに各項目の平均値を計算した後に、計測したい期間ごとにわけて計算することです。期間ごとに分けると、売上が良い時期・悪い時期を比較することができます。

BtoBのLTV計算方法

BtoBビジネスの場合、次の計算式でLTVを算出します。

LTV=「年間取引額」 ×「収益率」 ×「継続期間」

たとえば、【1社の年間取引額(100万円)×収益率(50%)×継続年数(5年)】の場合、LTVは250万円になります。

BtoBビジネスはBtoCとは異なり、即時に売上はたちません。購買にいたるまでに、営業・提案、見積、契約などのプロセスを経るため、営業コストが高くなる傾向にあります。短期的には収益に結びつかなくても、長期的に収益向上するのがBtoBビジネスです。LTVを定期的に把握して、成果を評価することが大切です。

サブスクリプションのLTV計算方法

サブスクリプションサービスのLTVは、次の計算式が用いられます。

LTV=「平均単価」×「粗利」÷「解約率」

サブスクリプション型ビジネスの最大の特徴は、1ヶ月や1年単位の安定した売上を見込めることです。ただし、継続利用されないと売上がストップしてしまうため、「解約率」を念頭にLTVを算出することが大切です。解約率は「月間の解約数」÷「月間の顧客全体数」で算出します。

LTV(ライフタイムバリュー)が注目される理由

最近は多くの業種でLTVを耳にするようになりました。その理由は次の4つがあります。

  • 新規顧客の獲得コストが上昇している
  • サブスクリプション型ビジネスの拡大
  • サードパーティCookie廃止の影響
  • 「One to Oneマーケティング」が注目

ひとつずつ見ていきましょう。

新規顧客の獲得コストが上昇している

マーケティング業界には「1:5の法則」という有名な法則があります。新規顧客を獲得するコストは、既存顧客より5倍かかるという法則です。どのビジネスモデルであっても、この法則は通用しますが、EC業界は例外的に少ない広告宣伝費で成果を出せる時代が10年前までありました。参入企業が少なかったことが理由ですが、近年はEC市場の拡大とともに新規参入企業が増え「1:5の法則」のとおりに進んでいます。

1:5の法則を念頭にビジネスを考えるならば、新規顧客の獲得コストを抑えて、収益を回収できるかを見極めることが大切です。そのためにLTVの指標は重要になっています。

サブスクリプション型ビジネスの拡大

サブスクリプション(通称:サブスク)は、定期的に料金を支払い利用するサービスです。従来のような商品やサービスを購入し所有するビジネスモデルとは異なり、クラウドの進化とともに急速に市場が伸びています。

株式会社矢野経済研究所の調査によると、サブスクリプション市場は、2022年度は前年同比9.5%増、2024年までに29%増加すると予測されています。サブスクリプションはデジタルコンテンツに限らず、アパレルや外食サービスなど、さまざまな業種で浸透しています。

ビジネスにおいて、サブスクリプションを展開するメリットは、顧客が商品やサービスを使い続ける限り売上を得られる点にあります。一方で解約した時点で収益がストップしてしまうため、LTVの指標は重要視されます。今後もサブスクを展開する企業が増えるにつれて、LTVはさらに注目されるでしょう。

サードパーティcookie廃止の影響

cookie(クッキー)とは、ユーザーが訪問したサイトの日時やログイン情報などをブラウザ内に記録する機能です。Webサイトを快適に閲覧するために欠かせない機能ですが、この機能を第三者のサーバーで記録し、分析や広告に使われる仕組みをサードパーティcookieと呼んでいます。このサードパーティcookieは、個人情報保護の規制で欧米を中心に世界中で厳しさを増しています。

事業者側がサードパーティcookieを利用する最大のメリットは、リマーケティング広告を出稿できることです。リマーケティング広告は、コストパフォーマンスが高く、収益をあげやすいのが特徴です。多くの企業が活用しています。現在ではAppleの「Safari」をはじめ、主力のブラウザにサードパーティcookieをブロックする機能が搭載されています。2024年後半にGoogle Chromeが廃止を宣言しており、そこで終焉をむかえる見込みです。

今後はサードパーティcookieに代用する技術も出てくると予想されますが、個人情報の保護を求める声は大きく、今以上に規制が厳しくなるでしょう。リマーケティング広告に頼らない集客方法が必須であり、リピーター獲得にむけたLTVが注目されています。

「One to Oneマーケティング」が注目されている

One to Oneマーケティングは、顧客ひとりひとりに対して個別にマーケティングをおこなう手法です。近年は市場シェアを得るためのマスマーケティングが主流でしたが、顧客の価値観や嗜好が多様化しており、従来のマーケティングでは、ユーザーの購買意欲を掻き立てることが難しくなっています。

One to Oneマーケティングは個々の顧客に寄り添い、最適なサービス・商品を提案する手法です。個の分析の指標にLTVが活躍します。

なお、One to Oneマーケティング自体は目新しい手法ではありません。たとえば昔からある商店街の八百屋や電気屋などは、何十年も前から取り組まれてきました。インターネットはビックデータを活用したマスマーケティングは得意ですが、One to Oneマーケティングは苦手でした。近年はテクノロジーが発達し、より細かな施策ができるようになった点も、One to Oneマーケティングが加速した要因です。

LTV(ライフタイムバリュー)を最大化させるための方法

LTVを向上させるには、次の4つの施策に取り組みます。

  1. 客単価を上げる
  2. 購入率・購入頻度を上げる
  3. 解約率を下げる
  4. コストを下げる

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1.客単価を上げる

LTVは客単価によって大きく変化します。客単価を上げるためには、おもに次の施策があります。

  • 商品単価を値上げする
  • まとめ買いや定期購入を勧める
  • 上位商品を勧める(アップセル)
  • 関連商品の購入を勧める(クロスセル)

客単価を向上させる最もかんたんな方法は「商品単価の値上げ」ですが、安易な値上げは顧客離れを招くため注意が必要です。最も有効なのは商品点数を増やすことです。購入意欲のあるユーザーに対して、アップセルやクロスセルを提案することで、1注文あたりの客単価を向上させることが期待できます。また、ユーザーは真ん中の価格帯を選ぶ購買心理があるため、「松・竹・梅」の価格設定も有効です。

2.購入率・購入頻度を上げる

LTVを向上させるには、潜在顧客をいかに獲得するかが重要な要素です。潜在顧客を獲得するためには、購入率(購入数÷訪問者数)を意識し高めることが大切です。購入率を高めるには次の点に留意しましょう。

  • 安心感を与える
  • 決済手段を増やす
  • 購入特典をつける

購買を検討するユーザーは、「買い物を失敗したくない」と常々思っているため、知らないお店で購入することに不安を感じています。不安を減らすには、レビューやお客様の声で評判を知り得ることや、売り手側の顔や想いを伝えることが大切です。また、希望する決済手段がないと離脱しやすくなるので、ターゲットユーザーに好まれる決済を取り入れましょう。

既存顧客に対しては、メルマガなどのプッシュ型アプローチで積極的に接触することが大切です。
時代はモノやサービスが溢れており、競合も多くいます。ユーザーが自社の店舗で購入してくれる動機は必ずしも強くありません。「○○を購入するなら、このお店!」と覚えてもらえるよう努めましょう。

3.解約率を下げる

サブスクリプションの場合、解約率を下げることでLTVを向上させることができます。解約率を改善するには、「解約されてしまう理由」にしっかり耳をかたむけることです。定期的にアンケートやフィードバックを取り、顧客の声を拾い上げましょう。

なお、物販ECサイトにおいてもサブスクリプションは可能です。代表的なのは果物や製菓、お酒など季節ごとの食材をセレクトし毎月お届けする「頒布会」です。アイデア次第で飲食に限らず、多くの商材・サービスで実現できます。

4.コストを下げる

LTVは「購入単価」×「収益率」×「購入頻度」×「継続期間」で算出されますが、仮に収益率が0%だとLTVは0になります。収益率を向上させることができれば、飛躍的にLTVを改善させることができます。収益を左右する固定費は、おもに次のものがあります。

  • 人件費
  • 広告宣伝費
  • 一般経費
  • テナント
  • 減価償却費

リピーター顧客が増えてくれば、新規顧客の獲得にかかる広告費を減らせるかもしれません。また、SEOやSNSなどのコンテンツ資産から集客できるようになれば、ネット広告費を減らすこともできます。定期的に自社の固定費を洗い出して、むだがないか確認しましょう。

顧客ロイヤリティを高めることでLTVが改善される

LTVの向上につながる施策の本質は、「顧客ロイヤリティを向上させること」にあります。顧客ロイヤリティは、販売する商品やサービスに愛情を感じてもらえたり、お店やスタッフに信頼を寄せてもらえたりすることです。顧客ロイヤリティを向上させれば長いお付き合いができるため、結果としてLTVが向上します。くわえてロイヤルティが高い顧客は、家族や友人に商品やサービスを紹介してくれるため、マーケティングにおいても好循環がもたらされます。

顧客ロイヤリティを高めるには、アンケートや調査で顧客の声を正確に把握することが大切。そして、購買から商品利用まで一連の顧客体験(CX)の満足度を高めることが大切です。

サブスクリプション型ビジネスの重要指標

最後にLTVとあわせて覚えておきたい指標を紹介します。SaaSをはじめとするサブスクリプション型ビジネスにおいては、とくに重要な指標です。

用語意味計算式
MRR特定の月の経常収益。初期費用など1回しか発生しない売上は除外し計算する。料金÷12ヶ月×ユーザー数
※年契約の場合
ARR年間経常収益。毎年決まって得られる収益・売上。MRR×12倍
ARPU1ユーザーあたりの平均的売上売上÷ユーザー数
チャーンレート一定期間中に解約した顧客の割合一定期間中に解約した顧客数÷当初の顧客数
CAC顧客を1人獲得するのに費やしたすべての費用顧客獲得の費用÷新規ユーザー数

サブスクリプション型ビジネスのメリットは、データ収集が容易である点です。期間やユーザー別など細かく分析することができますが、複雑にしすぎると変化に対応できないこともあるので注意しましょう。

スピード感をもたせるために、できるだけかんたんに把握できる仕組みが大切であり、達成したい目標に対してズレがないかを定期的にチェックすることが大切です。

LTVとCACの関係性

サブスクリプション型ビジネスにおいて、LTVとCACの指標を用いて算出する「ユニットエコノミクス」がよく利用されます。ユニットエコノミクスは、顧客やサービスの単位(ユニット)で経済性を測定する指標です。

ユニットエコノミクスは「LTV÷CAC」の値が3未満になると、事業の健全性が劣ると判断します。たとえば、LTVが200万円でCACが50万円であれば、ユニットエコノミクスは「4」になります。つまり「4倍の収益を生み出している」ということであり、事業の健全性が保たれていると判断できます。

もし数値が「1」を下回ると、収益より顧客獲得コスト(CAC)が上回っているので赤字となり、売れるほど損をすることになります。数値が「2~3」であっても短期的には問題ないですが、LTVの期間が長いとキャッシュフロー(収入から支出を差し引いて手元に残る資金)に問題がでるので注意が必要です。

まとめ

今回はLTVについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?LTVの取り組みは1990年代ごろからはじまったといわれています。インターネットの普及でユーザーが購入できる商品やサービスも格段に増えました。一方で価値観や嗜好も多様化しているため、これまでのマスマーケティング手法では顧客獲得が難しくなっていると感じます。顧客ロイヤリティを高めることが大切であり、個々のお客様と向き合い対話できる「人間力」がLTVを左右するといえそうです。

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