メタバースコマースとは?新たなECの可能性と強みを事例とともに紹介

近年注目されているメタバースは、仮想空間における接客、販売などでEC業界にも徐々に導入されています。メタバースによってリアルの世界で味わえない体験をコンテンツ化できれば、経済効果にもつながる可能性が高いです。開発のコストやハードルなどの問題はありますが、将来的な可能性を考え、導入を検討してはいかがでしょうか。

メタバースとは

メタバースとは、「meta」と「universe」からなる造語です。現実とは違う次元に存在する仮想空間を指しています。メタバースはあくまでも仮想空間にすぎませんが、仮想空間のなかに投影した自身はまるで現実のように行動できる点が特徴です。
たとえば、友人たちとコミュニケーションをとったり、商品やサービスを購入したりすることも可能です。

メタバース市場の成長予測

メタバース市場は、世界的大手のFacebookが社名をMetaに変更したことから急速に注目を集めるようになりました。ブルームバーグインテリジェンスの調査によると、2024年までに8,000億円規模まで成長するとみられており、さらなる可能性が秘められています。

メタバース×コマースの可能性

メタバースの浸透にともなって、物販やECとのシナジーについても検討されています。具体的な手法としては、仮想空間において企業と顧客の接点を設けて、ブランドの訴求や商品の販売などを行うものです。
実際、2021年12月に開催された「バーチャルマーケット2021」では、メタバース空間に設けられた会場に約80社の企業が出展しており、100万人以上のユーザーが参加しました。バーチャルマーケットにおいて、各社はデジタルコンテンツやリアル商品の販売、広告展開などを実施しており、まるで現実世界のような消費行動が多くみられました。

VRやARと何が違う?

メタバースはVRやARと混同されやすい概念です。いずれも近年になって突然普及したため、それぞれの定義や違いについてあまり理解できていない方も多いのではないでしょうか。
以下では、メタバースと関連する用語の共通点・相違点について解説します。

VR(Virtual Reality)

VR(VIrtual Reality)とは、バーチャルな世界を体験できる技術です。専用のゴーグルを装着すると、360度の視点で仮想空間を体験できます。さらに、最近ではコントローラーを使って仮想空間のなかを動き回り、よりリアルな体験を得られる仕組みも導入されています。
VRゴーグルを装着して没入感を味わうメタバース空間もありますが、メタバースにおいてVRは必須ではありません。また、メタバースはプラットフォームを指しているのに対し、VRはバーチャル体験を得るための技術を指すという違いもあります。

AR(Augmented Reality)

AR(Augmented Reality)とは、スマートフォンなどのデバイスを用いて、現実世界に仮想コンテンツを加えて表示する技術です。VRやメタバースと同様、仮想コンテンツを体験しますが、現実世界の延長線上で利用する点が主な違いです。
たとえば、スマートフォンを空にかざすと星座表を表示できたり、スマートフォンで自宅を撮影すると家具を配置したイメージを確認できたりします。

オンラインゲーム

オープンワールドのオンラインゲームは、メタバース空間の一つです。ゲーム内ではユーザーどうしが交流したり、物々交換したりでき、メタバースの定義を満たしています。
ただし、近年話題になっているメタバースは、オンラインゲームに比べてよりリアリティのある仮想空間です。

メタバースの特徴・できること

メタバースは、これまでにない体験やイベントを実現できる技術です。新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあるため、事業者の方はメタバースでどんなことができるかに注目しておくとよいでしょう。
以下では、メタバースによって実現できることについて紹介します。

まるで現実のような映像体験

VRやARの技術を活用すると、まるで現実のような映像体験を提供できます。圧倒的な没入感を得られるため、ゲームやアニメなどの業界で取り入れられており、ユーザーにリアリティある体験を提供しています。

バーチャルイベントの実施

メタバース空間では、音楽ライブや交流イベントなどのバーチャルイベントを実施できます。すでにバーチャルイベントが催された事例もあり、2019年にはフジロックフェスティバルがメタバース上に会場を再現したり、2020年には日本の人気ロックバンド「RADWIMPS」が初のバーチャルライブを実施したりしています。

仮想空間での販売活動

メタバース上では、仮想通貨を用いて商品を売買することも可能です。メタバース内で利用できるゲームアイテムやキャラクターはもちろん、土地の売買などもされており、今後はさらに幅広い販売活動が行われるとみられています。

メタバースのメリット

前述のとおり、メタバースは新たな体験を提供できる可能性を秘めており、そこにはさまざまなメリットが存在します。たとえば、非現実的な世界の再現、経済活動の活性化などが代表例です。
以下では、メタバースのメリットについて解説します。

非現実的な体験ができる

メタバースによって生み出された仮想空間では、あらゆる制約がなくなります。つまり、メタバース上で再現する表現力や技術力さえあれば、さまざまな非現実を生み出せます。
メタバースによってリアルの世界で味わえない体験をコンテンツ化できれば、話題性を高められるほか、経済効果にもつながるでしょう。

新たな経済圏を創出できる

メタバースに類するオンラインゲームは以前からありましたが、メタバースの特徴は仮想空間でリアルな経済活動が行われる点です。デジタルコンテンツはもちろん、リアルな商品の売買や投資なども実現できるため、さまざまな業種においてビジネスチャンスの可能性があります。また、メタバースに進出している企業が少ない段階であれば、先行者利益を得られる可能性も高まるでしょう。

コストを削減できる

今後、オフィスや店舗のバーチャル化が進むと、事業者の運営コスト削減につながります。従来、ビジネスにおいてはオフィスや店舗が必須となっており、テナント料や水光熱費などの固定費は避けられませんでした。
しかし、メタバースの普及によって仮想空間でビジネスができるようになれば、コストを抑えてビジネスに参入できるようになるでしょう。

メタバースのデメリット

メタバースにはさまざまなメリットがある一方、デメリットも指摘されています。また、誕生から間もない技術であるうえ、導入された実績もそれほど多くないため、潜在的なデメリットが眠っているリスクもあります。そのため、導入に際しては慎重に進める必要があるでしょう。
以下では、メタバースのデメリットについて解説します。

導入のハードルが高い

メタバースへの参入を考える際、もっとも大きな問題は導入のハードルです。ユーザー側はVRデバイスやPCが必要になるほか、事業者側は開発環境や技術力が求められます。VRの開発技術をもった企業や技術者の数は少なく、開発には大きなコストがかかるため、中小規模の事業者にとってはなかなか導入が難しいでしょう。

依存性の高さが指摘されている

メタバースの魅力は、リアリティの高さと没入感の深さです。しかし、これらの要素はメリットとして注目される一方、危険性も指摘されています。あまりにもリアルな世界であるため、仮想空間にどっぷりと浸かって依存してしまうリスクがあります。適度な距離感をもって楽しめるよう、ユーザーが意識する必要があるでしょう。

リアルなコミュニケーションが希薄になる

メタバース上では、現実世界と同じようなコミュニケーションが実現できます。さらに、メタバース空間は、自宅のPCからアクセスできる利便性ももちあわせています。そのため、メタバース上のコミュニケーションが、リアルなコミュニケーションに取って代わってしまうリスクに注意すべきです。

メタバースコマースの事例

メタバースとコマースの親和性が高いことは前述のとおりです。しかし、メタバースとコマースが合体した事例には、どんなものがあるのでしょうか。
以下では、メタバースコマースの事例について解説します。
※こちらの事例では、makeshopで構築したECサイト以外についてもご紹介しております。予めご了承ください。

バーチャルマーケット

バーチャルマーケットは、ソーシャルVRアプリ「VRChat」内に設けられた仮想空間で開催されるイベントです。業界内でもトップクラスの規模で開催されており、「バーチャルマーケット2021」では80以上の企業が出展しています。ユーザーはVRChat内の専用スペースにアクセスすると、スペースに出展している企業や個人の作品を楽しめる仕組みになっています。
セブンイレブンやSoftbankをはじめとする大手企業も数多く出展しており、メタバースを代表するイベントの一つです。イベント内では、アバターの販売やゲームの体験イベントなどが行われています。

REV WORLDS

REV WORLDSは、三越伊勢丹が運営するメタバースプラットフォームです。伊勢丹新宿店をメタバース上に再現しており、ユーザーは仮想空間に設けられた店内を回ってショッピングを楽しめます。店内を見て回るなかで気に入った商品があれば、ECサイトへのリンクを経由して購入できる点も特徴的です。
さらに、メタバース内で店員の接客を受けることはもちろん、友人と一緒にショッピングを楽しむことも可能です。

渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト

渋谷5Gエンターテインメントプロジェクトは、KDDIが主導するメタバースプラットフォームです。ユーザーはアプリ経由で仮想空間「バーチャル渋谷」にアクセスでき、渋谷の街並みを楽しんだり、イベントに参加したりできます。
当初は渋谷駅周辺のエリアのみでしたが、その後も開発が進められており、最近では原宿エリアも追加されたことでも話題になりました。直接的にコマースと結びつけるのではなく、イベントを開催して盛り上げる側面が強い事例です。

BEAMS

BEAMSは、バーチャルマーケットへの出展をはじめ、メタバースコマースに力を入れている企業です。リアル商品の販売だけでなく、オリジナルアバターや3Dモデルなど、メタバースならではのラインナップが注目されています。
そのほかにNetflixで配信された「浅草キッド」とコラボしたバーチャル浅草などの企画も手がけており、業界内でもトップランナーとしてさまざまな試みをしています。

まとめ

近年注目されているメタバースは、コマースにも新たな可能性をもたらしています。仮想空間における接客、販売などがすでに行われており、徐々に導入企業も増えています。
とくに若い世代をターゲットとするビジネスにおいては、メタバースを活用したマーケティングがトレンドとなりそうです。開発のコストやハードルなどの問題はあるものの、将来的な可能性を考えつつ、導入を検討してみるとよいでしょう。

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