NPSとは?計算方法から質問の内容、分析のポイントまで徹底解説

NPSは顧客ロイヤルティを数値化する指標を指し、顧客満足度に代わる新たな指標として活用されはじめています。この記事では、NPSの計算方法や質問内容をはじめ、具体的な分析のポイントを併せてご紹介します。

NPSとは

NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、これまで計測が難しかった顧客ロイヤリティを測るための指標です。つまり、NPSは顧客がある企業・ブランド・商品に対して、どれほどの愛着や信頼があるかをあらわしており、企業と顧客との接点である顧客体験の評価および改善に役立ちます。

近年では、事業の成長率と高い相関関係にあることから、欧米企業が積極的に活用しており、日本国内でも顧客満足度に代わる新たな指標として注目されています。

NPSと顧客満足度の違い

NPSが企業やブランドなどに対する愛着であることから、顧客満足度に似ているのではないかと思ってしまうかもしれません。しかし、NPSと顧客満足度は大きく異なる概念です。
主な違いとして、NPSは業績と高い相関関係にありますが、顧客満足度はかならずしもリピート購入や利用につながるわけではありません。顧客の満足という定義はきわめてあいまいであり、顧客の満足度が高ければ業績向上につながるとはいえないでしょう。

一方、NPSが高い企業は業績や成長性が高い傾向があり、企業の業績向上を追求するうえで重要な指標となっています。

NPSとeNPSの違い

NPSと似た名前の指標としてeNPSというものがあります。eNPSはEmployee Net Promoter Scoreの略称であり、従業員のエンゲージメントを測定するための指標です。つまり、従業員が職場にどれだけ愛着や信頼を抱いているかをあらわします。
eNPSが高い企業の従業員には、以下のような特徴があります。

  • 企業の戦略・目標を適切に理解している
  • 自発的に自分の力を発揮し、企業への貢献意欲が高い
  • 顧客に対してよりよいサービスを届けたいと思う

NPSの計算方法

NPSを計測するには、初めに「あなたはこの企業(または製品・サービス・ブランド)を他人にすすめる可能性は、どのくらいありますか?」と質問して、0~10の11段階で評価してもらいましょう。
その後、点数を基準にして、回答者を以下のように分類します。

  • 0~6:批判者
  • 7~8:中立者
  • 9~10:推奨者

また、それぞれ次のように定義します。

  • 批判者:企業のサービスや商品を購入しようとする人に対して、ネガティブな発言をして購入を妨げる
  • 中立者:企業のサービスや商品をすすめることも、批判することもしないが、小さなきっかけで競合他社の製品に乗り換える可能性がある
  • 推奨者:企業のサービスや商品を愛用しており、周囲の人に購入や利用をすすめる

NPSを分析するメリット

顧客満足度に代わる新たな指標として注目されるNPSですが、分析するメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
以下では、NPSを分析するメリットについて解説します。

顧客の評価をわかりやすく計測できる

NPSは顧客満足度と異なり、おすすめ度合いを聞くだけで計測できるため、顧客側としてもシンプルで回答しやすい指標です。そのため、商品購入後や接客対応時などの場面にも取り入れやすく、ほかの質問とあわせて利用できるメリットがあります。

収益拡大に向けた判断材料になる

NPSが高い企業は業績や成長性が高いため、収益拡大を目的としてNPSを伸ばすという施策も考えられます。実際に回答者の購買回数や一回あたりの購買単価を調べると、NPSが高い回答者ほど、いずれの指標も高いことがわかっています。
つまり、他人に対して商品やサービスをおすすめする度合いが高い人ほど、商品やサービスを多く買っているといえるでしょう。

顧客にあったアプローチを検討できる

他人にも商品やサービスをすすめたいと思ってもらうには、商品そのものだけでなく、広告から購買体験までのさまざまな段階で価値を感じてもらう必要があります。そのため、おすすめ度を質問すると同時に、顧客体験・購入体験に関する質問もするようにしましょう。
具体的には、以下のような項目に落とし込めるはずです。

  • 認知
  • Webサイトへの訪問や回遊
  • 店頭での接客
  • 購入
  • 商品利用
  • お問い合わせ
  • 購入後のサポート

NPSの調査によって業績を上げていくには、何が顧客にとって重要な体験であったかを把握することが重要です。NPSに影響する要素を中心に強みと弱みを分析することによって、どのように最適化すべきかが明らかになります。

NPS調査の方法

NPSの調査方法には2種類あり、それぞれトランザクション調査、リレーショナル調査と呼ばれています。
以下では、それぞれの手法について解説します。

トランザクション調査

トランザクションとは取引を意味する単語であり、トランザクション調査は、顧客が商品購入やサービス利用などの体験をした直後に実施・評価する手法です。体験直後ということもあり、顧客の体験を正確に把握できるほか、提供するサービスや商品の課題を発見しやすいメリットがあります。
ただし、評価の内容が直前の体験に左右されやすくなるため、ブランド全体の評価手法としてはあまり適していません。

リレーショナル調査

リレーショナル調査は、自社ブランドに対する顧客の体験を評価する方法です。トランザクション調査と異なり、商品購入・カスタマーサービス・周囲の評価などを総合的に判断することが可能となります。
おすすめの調査方法は、体験時の満足度もあわせて調査することです。体験時の満足度を測ることによって、どの体験が顧客にとって重要だったかが把握できます。

また、複数のブランド体験を総合的に判断してもらうため、年1~2回ほどの調査をした方がよいでしょう。ただし、かならずしも顧客体験の直後におこなうわけではないため、調査に対する回答からヒントを得て対応したとしても、タイミングが遅くなり顧客が離反してしまう可能性もあります。

NPS調査に盛り込むべき質問

NPS調査をするにあたって、質問内容と文章はスコアに大きな影響を及ぼす要素です。「対象となる企業・商品・ブランド・サービスをどのくらい知人にすすめたいですか」という疑問文をベースに、具体的な商品や購入層などにあわせて加筆修正する必要があります。

たとえば、「30代の男性にどのくらい本サプリメントをおすすめしたいですか」のような形式です。表現の違いとしてはそれほど大きくありませんが、これだけで結果のスコアが変わるケースもあります。

また、基本の設問以外に、調査対象者が製品などをおすすめする要因を知ることも業績アップにつながります。
以下では、NPS調査をする際に調査に加えるべき質問を紹介します。

推奨度の点数

推奨度は、NPS調査における必須要素です。対象となる企業・商品・ブランド・サービスを他人にどの程度おすすめしたいかを尋ねましょう。
また、質問する際には点数形式として、0~10の11段階にします。日本人を対象とする調査では、中央付近で回答する傾向が強いことも頭に入れておくとよいでしょう。

点数をつけた理由

次に、推奨度のスコアをつけた要因を探ります。理由の項目を自由記述にすることで、顧客の本音を探ることも重要です。購入してくれた理由を探ることは、自社商品を他社商品と比較した際の強みを発見することにもつながります。
また、独自の強みを分析することで、販売を促進する際に注力すべきポイントも見えてくるでしょう。

評価ポイント

商品について評価したポイントについても調査すべきです。顧客が商品を評価するポイントとしては、以下のようなものがあげられます。

  • デザインがよかったから
  • 使うタイミングが頻繁にあるから
  • 日常の苦労を軽減できそうと思ったから

なお、評価ポイントについても、それぞれ0~10の11段階で評価してもらうのがおすすめです。点数評価は、NPSとの相関関係を把握するために必要であり、結果次第で改善行動の優先順位が決まります。優先度の高いポイントから改善に着手すれば、早い段階で業績アップが見込めます。

顧客のプロフィール

顧客の職業・性別・居住地域などのプロフィールも重要な要素です。商品をよく購入する層を明確化できるうえ、高単価層やリピーター層なども把握しやすくなります。

NPSを活用する際のポイント

NPSを活用して業績向上を見込めることがわかっていても、実際にどのように活用すべきかがわからない方もいるのではないでしょうか。
以下では、NPSを使って業績アップを目指す際のポイントについて紹介します。

同業界の他社と比較する

NPSを比較するときは、同業界の他社と比較するようにしましょう。各業界ごとにNPSの平均値は大きく異なっており、違う業界どうしで比較しても参考になりません。
たとえば、ネット証券1位のSBI証券は-8.1ptであるのに対して、動画配信サービス部門1位のNetflixは-2.0ptと大きく差が開いています。同業界の企業と比較することで、業界内における立ち位置がわかり、そこから分析を進めていくと自社の強みや弱みなども把握しやすくなります。

回答しない顧客の存在を意識する

NPS調査の回答を得られたからといって、結果のすべてを鵜呑みにしてはいけません。アンケートに回答していない「サイレントマジョリティー」がいるためです。
とくに、調査対象数に対して回答数が極端に少ない場合は、サイレントマジョリティーの割合が高いと考えられます。このような状態では正確に現状を把握できず、精緻な分析は難しいでしょう。
サイレントマジョリティーの存在を意識すると同時に、有効な調査になる程度の回答をもらえるように努力しましょう。

アンケート結果を課題解決につなげる

前述のとおり、アンケートを実施することは企業の課題発見につながりますが、アンケートの実施自体を目的にしないようにしましょう。本来の目的は、業績向上のヒントを得ることであるはずです。

NPSに関するFAQ

NPSは日常的になじみのある概念ではありません。そのため、概要を理解できても疑問に感じる部分があるかもしれません。
以下では、NPSに関するよくある質問と回答について紹介します。

NPSの弱点は?

NPSの弱点は、結果に偏りが出る可能性がある点です。回答者によって適当に点数をつける人がいたり、質問の訊き方によって結果が左右されたりすることがあります。
また、サイレントマジョリティーの存在もあるため、結果が現状のすべてをあらわしているわけではないことを考慮しましょう。
そのほかに以下のような弱点もあります。

  • 業界によって平均値に大きな違いがあり、同業界の他社としか比較できない
  • 回答者がサービスを使う本人であるため、主観的な回答になり、科学的根拠に欠ける

NPSの有効性は?

実際にNPSを活用して成果があがった例として、プロ野球球団のヤクルトスワローズは、ファンクラブ会員のロイヤルティ向上を目指してNPS調査を実施しました。
NPS調査の結果をもとに、ファンが求める会員特典を設け、その後も継続的にNPS調査によって明らかになった課題の解決に努めたことで、ファンクラブの会員数を倍増させています。

NPS向上の取り組みは?

NPSを向上させるには、推奨者を増やすと同時に、批判者を減らすことが重要です。それぞれ以下のような取り組みが考えられます。

  • 推奨者を増やす:ユーザーインタビューの実施や、購入後のアフターサポートの充実でロイヤルティの高い顧客を増やす
  • 批判者を減らす:クレームやネガティブな口コミを調査して、対応が必要なものは迅速に改善をおこなったり、カスタマーサポートによる適切なクレーム対応やアフターサポートをしたりして、中立者に変える

批判者を推奨者に変えることは難しいため、まずは中立者に変えることをおすすめします。また、批判者の考えを変えること自体が難しい場合は、推奨者を増やすことに注力したほうがよいでしょう。

まとめ

NPSを上げることは、商品やサービスの推奨者を増やすことにつながります。その結果、リピーターが増え、ポジティブな口コミにより新規顧客も増えるでしょう。
その結果、業績の向上につながるため、まずはNPS調査を実施してみることをおすすめします。

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